なつかしく悲しい夢

長い夢を見た。
誰だかは分からないが僕が大事だと思っている友人のグループが、山に出かけて洞窟のようなところで何かの生き物に襲われる、というものだった。
僕はそれをダンジョンRPGのように上から断面図の構図で見下ろしていて、無音のその世界では淡々と事件がすすみ、翌朝には地元の人たちが喪服姿で現場にはいり、そのままお通夜の準備がすすんでいた。

やはり、というのだろう。奴も登場した。最初は、喪服姿の彼のお姉さんと僕の友人たちがおしゃべりをしていて、そこにいつの間にか奴は加わっていた。
奴は10年前の山歩き姿のままだった。「○○にあるネギトロ丼が神のようにうまかった、はるばるそのために行ったことを覚えているか」という話を、あの頃のままに不必要なほどの大きな声で繰り広げていた。
今思い返しても、かつてそんな話をした記憶はないけれど、これもやはりあの頃のように、僕は行っていないけれどあいつらはつるんで出かけたあの山の話をするように、登場するみんなが、○○のネギトロ丼についてこれ以上ないほど楽しそうに話していた。

30分ほど前に目が覚めたとき、あまりに感覚が現実のものに近かったので、数分の間「夢だ」ということが飲み込めなくて、奴になんて言ってやろうかということをぼんやりと考えていた。
夢だということがわかると急に怖くなった。誰かの身に何かが起こっていないだろうか。
僕がたまに体験するへんてこな予知夢や違和感は、いつもこんな形で漠然としている。だから実際の役に立ったことはないのだけれど、後から「あれはあのことだったのか」と僕一人が納得するのにだけは役立っていて、それだけにいっそう悲しくなる。もちろん、何もないことだって多い。たまたま何かが起こったときにだけ、強烈な印象をうけた僕はそのへんてこな前兆をあちこちに言ってまわるだけのことだ。

何もないといい。きっと何もないのだろう。
こうして僕は年をとっていく。それでいい。

日記をつけようと思う。